五十嵐と歩海の十年後設定微えろ鬱。暗いし結構致命的ネタバレかも。
なにがどうしてそうなったのかわからない。ふざけてるんだと思った。唇と唇が触れている。濡れた音を立てて舌先が触れ合っている。これってキスだ。ディープキス。なんだかちょっと酸欠になりそうで、でもそれが逆に気持ちよくて、恍惚感があって、なんかやばいかも首絞められても感じちゃったりしたらどうしようとか、そんなことぼんやりと考えて。
指先が熱い。ワイシャツの下。ちょっと擽ったい。脇腹を撫でて、少しずつ這い上がって、あ、乳首。
「ん……」
キスが途切れる。吐息が触れ合う。糸引いて。
「感じる?」
ここ、と耳許に囁いたのは親しげな声。ワイシャツ、前開けもしないで肘まで突っ込んでたくし上げて。固くなったとこ指先で弄ぶ。
おかしいよ。
「歩海……なんで?」
「好きだよ」
簡潔な答え。でもそんなの答えじゃない。二の腕をつかんだ。やめさせたくて。
「どうしたの」
「やだよ、こんなの」
腿の間に歩海の膝がある。どうしたら良いんだろう。
「おかしいよ。変だろ、こんな」
「変かな。でも、五十嵐が欲しい」
押し返した手が、そのまま下に伸びる。
「あ、だめ」
スラックスのファスナ、開けて指入れて。触り方がもどかしくて。
「固くなってるよ」
「なに……よせよ馬鹿」
「気持ち良いでしょ」
「やめろって!」
怒鳴ったら、悲しそうな顔された。起き上がって押しのけて、それで目が覚める。
悲しそうな顔ばっかり、やけに鮮明に思い出す。
「おかしいよ……」
こんな夢。見るなんておかしいよ。
涙が出るなんて、おかしいよ。大嫌いなのに。
大嫌いだったのに。
後悔したくないって、
決めたのは自分だったのに。