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断章

[男男]

とある独白。完全なる反故。

 いつの間に自分はこんなにも価値観を違えてしまったのだろう。男の腕に抱かれてその力強さに安堵を覚えるだなんて。
 むかしだったら、おんなのこの柔らかさをなにより愛おしいと思ったのに。
 守りたかっただけ、かも知れない。守っているつもりになりたかった。
 自分がそんなに強くも器用でもないと気づいて。ひとでなしではないと思いたくて。抱かれていたら、罪悪感だけはもたなくて済むから。
 それならやっぱりひとでなしだ。
 捨てられてもしょうがないと思う。だから好きにはならない。他人に見限られるだけでつらいのに、大切なものまで失ってしまったら、きっと耐えられないから。
「なに考えてる?」
 頭の上で声がする。答えないでいると、髪に唇が触れる。
「かわいいな」
「……なに」
「かわいいよ」
 より強く抱き寄せられるまま、鼓動の音色に耳をゆだねる。さっきまで激しかったその響きが、いまはゆったりと落ち着いている。
 ほんの少しだけ許されても良いような気がして、真っ暗な眠りに落ちていく。

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  • 2012/03/07(水)
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