とある独白。完全なる反故。
いつの間に自分はこんなにも価値観を違えてしまったのだろう。男の腕に抱かれてその力強さに安堵を覚えるだなんて。
むかしだったら、おんなのこの柔らかさをなにより愛おしいと思ったのに。
守りたかっただけ、かも知れない。守っているつもりになりたかった。
自分がそんなに強くも器用でもないと気づいて。ひとでなしではないと思いたくて。抱かれていたら、罪悪感だけはもたなくて済むから。
それならやっぱりひとでなしだ。
捨てられてもしょうがないと思う。だから好きにはならない。他人に見限られるだけでつらいのに、大切なものまで失ってしまったら、きっと耐えられないから。
「なに考えてる?」
頭の上で声がする。答えないでいると、髪に唇が触れる。
「かわいいな」
「……なに」
「かわいいよ」
より強く抱き寄せられるまま、鼓動の音色に耳をゆだねる。さっきまで激しかったその響きが、いまはゆったりと落ち着いている。
ほんの少しだけ許されても良いような気がして、真っ暗な眠りに落ちていく。